鬱陶しい長い長い梅雨がようやく明けたかと思うと、間髪入れずに厳しい暑さが連日続いており、皆様の疲労もピークに達しているかと存じます。
こういう時にこそ身体の疲れを取るのに睡眠が大事ですよね! 今回のくるくる保健室のテーマは『睡眠』です。 熱帯夜でもぐっすり眠れてすっきり起きられる快眠法を取り上げたいと思います。
よい睡眠を得るための主な条件は環境・寝具・身体の状態の3つだそうです。 特に重要なのが布団をかぶった中の空気の状態で、「寝床内気候」と呼ばれるものですが、摂氏32~34℃、湿度45~55%が最適とされています。 寝付きを良くするためには、手足や皮膚から放熱して身体の中心部の温度(深部体温)を下げることが大切で、人間の深部体温は夕方が最も高く、深夜から明け方にかけて1~2℃下がる。 体温が下がり始める夕方から夜にかけて、眠くなると手足がぽかぽかしてくるのは、その為だそうです。 しかし、夏は暑さや高い湿度で、放熱しにくくなってしまうので、床に就く2時間程前に20分程度、ぬるめのお湯で入浴したり、軽く汗ばむ程度のストレッチをしたりして血行を良くして放熱を促すといいですよ。 特に熱帯夜には、冷やしたタオルや氷などで火照った身体を冷やしたくなりますが、手足を冷やしてしまうと、熱を逃がさないように抹消血管が収縮してしまうので、身体の外に放熱できなくなってしまい、深部体温が下がりづらく、眠りにくくなります。 寝苦しい夜には汗の出口となりやすい手足を避け、血管が表面を走行している、頭部や頸部、腋窩部を冷やせば、冷えた血液が身体の深部体温を効率的に下げやすくなります。 適度な室温も大切で、我慢せずにエアコンを活用するといいです。 冷風を直接に身体に当てずに、寝る前に部屋全体の温度を下げておくのがコツです。 節電で日中は28℃に設定している人も、快適に眠れるよう、夜は26℃がお薦めです。 日中と同じ28℃では寝るにはやはり暑く、節電が気にはなりますが、夜は電力のピークではないですし、かえって夜にぐっすり眠って日中節電するほうが効率的です。
朝までつけっぱなしに抵抗がある人や冷房が苦手な人は、それぞれのご自宅環境はあると思いますが、寝室のエアコンではなく隣の部屋のエアコンを作動させてもいいですし、眠りの深いノンレム睡眠が多く現れる寝入りから3時間程度にタイマーセットしその後切れる設定にしてもいいですしね、扇風機を併用すれば効率よく冷気が循環し経済的です。 夏は、汗による不快感で頻繁に寝返りして眠りが浅くなったり、目が覚めたりしてしまうので、それを防ぐためには、汗を吸収、発散する素材のシーツやパジャマを活用するといいです。 日本古来の麻やい草、竹素材の寝具の他に、最近では吸湿・速乾機能や冷感をうたった衣類、寝具がよく売られておりますね。 枕はソバ殻がお薦めです。低反発のウレタン素材は人気が高いですが、通気性が悪い為、夏には不向きです。 どうしてもウレタン素材を好む方は、枕カバーを通気性の良い麻やガーゼ綿など肌触りのよいものを選んでみるのも手かもしれません。
最後に身体の状態ですが、先ずはお風呂です。 夏は暑いのでシャワーで済ませてしまう方がどうしても多いようですが、夏こそ湯船にしっかりつかる事が大事です。 ポイントは38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりつかり、半身浴などしながら就寝の2~3時間前に入られると、血行もよくなり丁度放熱され寝付きやすくなる様です。
熱い風呂を好まれる方は、少し早めの時間に入る工夫をされるといいです。 その他、風呂に入る前に軽いストレッチやウォーキング、スロージョギング等されてうっすら汗をかくというのもいいですよね! 寝る30分前には照明を副交感神経を優位にさせる暖色系の優しい光に替え、くれぐれもパソコンやスマホから発せられる朝日のような青白い短波長を多く含む光(ブルーライト)は浴びないようにして下さい。 青白い照明を浴びると、体内リズムをずらして、眠り付いたばかりの睡眠が浅くなり、質が落ち全体的に悪影響を与えるという調査結果が出ております。 その他、熟睡を妨げる身体の状態として、アルコールやカフェインを多く含む飲み物は飲まないようにしたり、意外と「お酒を飲まないと寝れないんだ!」という方が時々見受けられますが、アルコールは2~3時間で肝臓で分解されてしまい、その後に眠りが浅くなって、かえって夜中に目を覚まして、またお酒を飲んでしまうという常習性が出現しアルコール依存症になる危険性がありますので、ほどほどにして下さい。 昼寝は長くとも、深いノンレム睡眠に入る前の30分以内にとどめ午後3時以降には昼寝はしないことです。 日照時間が長くなる夏は、1年のうちでも睡眠時間が短くなる時期で活動モードになる時ですので、眠くないのに無理して布団に入らずに、眠くなったら寝床に入るようにし、無理に寝ようとしたり、睡眠時間を気にしすぎたりするとかえって「眠れない」との記憶が定着し、不眠症につながる恐れもございますので、質の良い睡眠を心掛けて下さいね。以上を実践してもなかなか眠れないという方は不眠症の可能性がございますので、一度専門医を受診するとよいと思います。
『睡眠障害』 夜間に眠れなかったり日中に寝入ったりする睡眠障害で治療が必要な人は全国に推定で1700万人いるとされております。 その中でも一番多いのが「不眠症」で、日本人の5人に1人、高齢者に限っては3人に1人が不眠に悩まされているという我が国では、一体何が起こっているのか?「眠りたいのに眠れない」と苦しむ方の脳の中はどんな状態なのか?何が安眠を妨げているのか?よい睡眠とは何か?不眠症が発生する背景には何が隠されているのか?考えれば考えるほど眠れなくなる日々が続くのは僕だけではないと思われますが・・・。(笑)
昨年の3月に厚生労働省健康局から「健康づくりのための睡眠指針2014」が発表されました。 その中で「睡眠12箇条」というのがございましたので、ここで抜粋させていただきます。
第1条:良い睡眠で、からだもこころも健康に。 良い睡眠で、からだの健康づくり 良い睡眠で、こころの健康づくり 良い睡眠で、事故防止
第2条:適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。 定期的な運動や規則正しい食生活は良い睡眠をもたらす 朝食はからだとこころのめざめに重要 睡眠薬代わりの寝酒は睡眠を悪くする 就寝前の喫煙やカフェイン摂取を避ける
第3条:良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。 睡眠不足や不眠は生活習慣病の危険を高める 睡眠時無呼吸は生活習慣病の原因になる 肥満は睡眠時無呼吸のもと
第4条:睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。 眠れない、睡眠による休養感が得られない場合、こころのSOSの場合あり 睡眠による休養感がなく、日中もつらい場合、うつ病の可能性も
第5条:年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を。 必要な睡眠時間は人それぞれ 睡眠時間は華麗で徐々に短縮 年をとると朝型化 男性でより顕著 日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番
第6条:良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。 自分にあったリラックス法が眠りへの心身の準備となる 自分の睡眠に適した環境づくり
第7条:若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。 子供には規則正しい生活を 休日に遅くまで寝床で過ごすと夜型化を促進 朝目が覚めたら日光を取り入れる 夜更かしは睡眠を悪くする
第8条:勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。 日中の眠気が睡眠不足のサイン 睡眠不足は結果的に仕事の能率を低下させる 睡眠不足が蓄積すると回復に時間がかかる 午後の短い昼寝で眠気をやり過ごし能率改善
第9条:熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠。 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る 年齢にあった睡眠時間を大きく超えない習慣を 適度な運動は睡眠を促進
第10条:眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。 眠たくなってから寝床に就く、就床時刻にこだわりすぎない 眠ろうとする意気込みが頭を冴えさせ寝付きを悪くする 眠りが浅いときには、むしろ積極的に遅寝・早起きに
第11条:いつもと違う睡眠には、要注意。 睡眠中の激しいいびき・呼吸停止、手足のぴくつき・むずむず感や歯ぎしりは要 注意 眠っても日中の眠気や居眠りで困っている場合は専門家に相談
第12条:眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。 専門家に相談することが第一歩 薬剤は専門家の指示で使用
以上12条から成り立っておりますが、ここで特に注目したいのが、第4条の不眠の症状がある人は、うつ病に罹りやすいという事が科学的根拠に基づく事実だそうです。 第7条では、起床時刻を3時間遅らせた生活を2日続けると、高校生では体内時計が45分程度遅れることが分かったそうです。 1日の覚醒と睡眠のタイミングを司っている体内時計は、起床直後の太陽の光を手がかりにリセットし、1日の時を刻んでいるそうです。 朝7時頃の朝日に浴びる事が生活のリズムを作るわけですね!第8条では睡眠障害によって経済的にどれほどの損失をもたらしているかというと、年間で3.4兆円だそうです。実際、医療費は入っていないので損失額はこれ以上に及ぶそうです。 第11条に出て来る病気は皆さんもご存知の「睡眠時無呼吸症候群」ですし足のむずむず感や熱感は「レストレスレッグス症候群」手足のぴくつきは「周期性四肢運動障害」歯ぎしりは「顎関節障害・頭痛」などの可能性が高いです。 また、きちんと睡眠時間が確保されていても日中の眠気や居眠りで困っている場合は「ナルコレプシー」などの過眠症の可能性があります。 この病気は最近の研究で脳内のオレキシン という覚醒維持に関連した物質の低下が病態に関係していることが判明して来ました。
『睡眠なんでもQ&A』 ○×形式でお答えください!
第1問:「寝る子は育つ」とよく昔から言われておりますが、成長ホルモンは22時から翌2時の睡眠のゴールデンタイムの間、眠っていないと分泌しない!○or×?
第2問:90分の倍数で起きればすっきり目覚める!○or×?
第3問:週末に寝だめをすると睡眠不足が解消され、身体がリセットされる!○or×?
第4問:寝不足は体力を消耗するのでダイエットにはいい!○or×?
第5問:眠くなくても布団に入った方がよい!○or×?
第6問:寝る前の激しい運動は熟睡を促す!○or×?
第7問:7時間睡眠が一番健康で長生き出来る!○or×?
以上、中途半端な問題数で恐縮ですが、今まで書いてあったことをしっかり読まれた方は簡単だったのではないでしょうか。 回答と解説は本サイト『くるくるチャンネル』のトップページに行っていただいて、『かわい接骨院』のバナーをクリックして当院のホームページに進んでいただくと、回答と解説を載せてありますのでご参照下さい!
最後になりますが、小中学生を子供さんに持つ親御さんに注意して頂きたいのですが、子供の睡眠不足が問題視されております。以下の質問にチェックが入るか確認してみて下さい。 ①□日中いらいらしている ②□落ち着きがない ③□昼に寝てしまう ④□朝、起きられない ⑤□平日と休日の睡眠時間の差が2時間以上ある ⑥□朝、部屋のカーテンを開けない ⑦□朝食を食べない ⑧□布団に携帯電話やゲーム機を持ち込む
①~⑤にチェックの入る子供さんは睡眠が不足しているサインです。
⑥~⑧は睡眠のリズムが崩れる原因になります。
光を浴び朝食で体温を上げて、身体を目覚めさせましょう。
⑧は睡眠の質を下げる可能性がありますので、光や音を控えめにして、眠れる環境をつくることが大切です。
身体の疲れをとり、脳の記憶を整理する睡眠は、成長が盛んな子供にとっては特に重要な意味があります。
深い眠りに入ると分泌される成長ホルモンは、脳や身体の発達に欠かせません。
睡眠不足になると生活リズムが崩れて不登校につながることもあります。
きちんと時間を確保することが大事です。
また、睡眠不足の影響は、昼間の眠気として現れるとは限らず、小学校低学年くらいまでは、いらいらや、落ち着きがないといった症状が出て、発達障害と誤解されることもあるといいます。
それに、睡眠不足が続くと、子供でも糖尿病や肥満になるリスクが高まるとも指摘されております。
夜になると、メラトニンという脳の松果体から分泌される睡眠ホルモンガ多く出て、同時に体温が下がることで眠くなるのですが、これから夏休みに入って、ついつい夜更かしをしたりして、寝るタイミングが遅くなり新学期が始まると、身体がきつくて起きられなくなるという悪循環につながるので特に長期の休みの時にこそ日頃崩れた生活習慣を直し戻すようにしたほうがいいでしょう。
その方法として、2週間程毎朝決まった時間に起き、5000ルクス以上の強い光を浴びる。(特に夏休みは最高の環境ですね!) 5000ルクスとは通常の室内の10倍ほどの明るさで、これで、体内時計を早め、夜早い時間にメラトニンが分泌されるよう調整します。 重症の場合は入院治療もすることもあるそうです。 メラトニンの材料は脳内の神経伝達物質の「セロトニン」であるため、セロトニンが不足するとことによってメラトニンが不足します。 セロトニンの不足は「うつ病」の原因にもなります。 「子供のうつ病」が最近注目視し始めておりますが、『うつ病=セロトニン不足=メラトニン不足=不眠症』という図式が完成してしまいます。 子供もしっかり睡眠時間を確保して差し上げ、朝、決まった時間にカーテンを開けしっかりとサンシャインシャワーを浴びさせ、朝食を食べて体温を上げ、週末も寝だめをせず、平日と同じ時間に起きるといいですし、メリハリのある生活で、日中に外で遊んだり運動をしたりすると、寝付きがよくなり、夜眠りにつきやすくなります。
くれぐれも、スマホや携帯ゲーム機を布団に持ち込んでやらせない事、子供の生活リズムは親の生活リズムと大いに関係致しますので、親が規則正しい生活ができるよう協力することが大切です。
「良質な睡眠」とは・・・?脳は通常、その人に必要な睡眠を元々作り出すようにつくられていますので、良質な睡眠というものにあまりこだわる必要がなく、睡眠という生理学的過程は睡眠をとることそのものが目的なのではなく、きちんとした覚醒 を得る事が目的ですので、体感的には、翌日の覚醒がきちんと保たれて効率のいい作業が出来る状態にあれば、それでOK位の気持ちでいいと想います。 「今日もまた眠れないんじゃないか」「寝不足になったら明日のプレゼン失敗してしまう」「朝が来ると試験を受けなくてはならない」等々色々なマイナス思考や恐怖心が不眠へとつながり、いずれ「眠るのが怖い」「眠れないことが怖い」にまで発展し最終的には薬物にまで手を出す様な人まで現れているのが現状です。 快眠へのこだわりが不眠症を生むといっても決して過言ではございません。 睡眠を型にはめて考えるのではなく、眠くなったら寝るぐらいの気持ちで捉えていると楽ですよ! 今までにヒトは何日起き続けていられるかという実験をした人がいるらしいのですが、約11日(264時間)だったそうです。 ヒトは3日寝ないと死んでしまう?なんて都市伝説的な噂もありますが死ぬ前には眠るそうですから大丈夫です。 さぁ!!今晩から安心してゆっくりと寝て下さいね。
<参考文献>
「医道の日本」2015 7月号 「健康づくりのための睡眠指針 2014」 「日本経済新聞 NIKKEIプラス1」 「朝日新聞 月曜日夕刊 体とこころの通信簿」
かわい接骨院・じょんのび治療室 主宰 川合 晃生
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