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くるくる保健室 No.5 『腰痛について』


我が国では10人中に8人が一生の間に一度は激しい腰痛に罹患すると言われ、これは風邪に続く第2位の記録で腰痛は国民病と言っても決して過言ではありません。

全国には2800万人が推定で腰痛を患っていると推測され、40~60代の約4割が腰痛で悩んでいるというデータがあります。2012年11月に日本整形外科学会と日本腰痛学会は「腰痛診療ガイドライン」を公表しました。これは、国内外から900あまりの腰痛に関する論文を分析した科学的根拠に基づく信憑性のあるもので、各医療機関では腰痛治療・診断の一定の基準となる指標として期待されております。


がんや骨折を疑わせる明らかな症状があれば「危険信号」と判断し、画像診断や血液検査で痛みのもとになっている病気を特定致します。危険信号まで行かなくとも脚の痺れや排尿障害などの神経症状があれば、これもまた詳しい検査に進みます。 しかし、エックス線やMRIを使った画像検査をしても原因がはっきりしない『非特異的腰痛』が腰痛全体の85%程度を占めます。

それではここで、原因のはっきりする特異的腰痛を挙げてみます。皆さんも聞いたことがあると思いますが、 ①急性腰痛症(ぎっくり腰)  重い物を持ち上げたときや急に姿勢を変えたときなどに起こりやすく、激しい痛みが急激に起こります。西洋では魔女の一撃とも呼ばれ、体を動かした時に腰が痛み日にちの経過とともに症状が軽減いたします。どんなに痛みが強くとも約3週間もすれば治癒いたします。 ②腰椎圧迫骨折  腰に圧力が加わって、椎骨がつぶれることで起こります。事故などによって起こる事も多く、高齢者では骨粗鬆症が背景にあり尻もちをついたり寝返りうったり、くしゃみをしたただけでも発症することがあります。お年寄りが身長の低下によって気付く場合も少なくありません。 ③腰椎椎間板ヘルニア  腰痛のほかに、所謂坐骨神経痛様疼痛や腰や脚の痺れ感・麻痺・脱力感・排尿障害などの症状が出ることがあります。前屈すると症状が増強致します。 ④脊柱管狭窄症  腰や脚の痛み・痺れによって休み休みでないと歩き続けることが出来なくなる間欠性跛行が出現します。灼熱感・脱力感・排便排尿障害・会陰部のほてりなどの症状が出ます。体を後ろに反らす動きをすると症状が強まり、前屈すると楽になります。 ⑤変形性腰椎症  加齢により腰椎が変形して起こります。レントゲンを撮ると腰椎にトゲの様な骨の突起(骨棘)が見つかります。腰痛の他にも、臀部や太ももにも痛みを感じる事があり、朝起きたときなどの動作開始時に痛みが強く出たり致しますが、動いているうちに症状が軽くなります。長時間の同姿勢で痛みが増強します。 ⑥腰椎分離すべり症  腰椎を繋いでいる筋肉の連携部分が切れてしまい、繋がりの緩くなった腰椎が体の前方へとずれていくことで起こります。子供の頃に激しい運動をしていると、なりやすく、鈍く重い腰痛が同じ姿勢を長時間とった後に出るという特徴があり、体を後ろに反らすと症状が増強し、前屈すると軽減致します。 ⑦腰椎変性すべり症  加齢に伴う腰椎の老化によって、上下の腰椎がずれてしまって起こります。高齢の女性に多く発症し、脊柱管狭窄症の原因疾患の一つで、間欠性跛行や会陰部のほてり等の症状が出ることもあります。 ⑧筋・筋膜性腰痛  腰を支える筋肉や靱帯の緊張や疲労から起こります。鈍く重い腰痛が、同じ姿勢を長時間取った後に出るという特徴があります。

以上に挙げた腰痛は腰椎や周辺の筋肉・靱帯の異常による腰痛ですので、気になる方は近くの整形外科や接骨院を受診して下さい。しかし、腰を含め周辺の組織に異常があって腰が痛いのならいいのですが、中には重篤な病気が隠されている場合もございますので、それらの病気をご紹介致します。

①癌の脊椎転移  癌が腰椎に転移して腰痛を引き起こします。肺癌・甲状腺癌・腎臓癌・大腸癌・前立腺癌等、多く癌が原因となります。特徴と致しましては、安静にしていても強い痛みが出現し、日に日に痛みが強くなり、吐き気も伴う場合は要注意症状ですので主治医に相談するか内科を受診して下さい。 ②化膿性脊椎炎  脊椎に細菌が感染して起こります。高齢者や、糖尿病、癌、肝機能障害等で免疫機能が低下している人に起こりやすいとされております。急性の場合は、腰背部の激痛、高熱を伴います。慢性化すると、痛みは比較的軽くなり、微熱を伴います。病気のある部位をたたいたり、押したりすると痛みが生じることがあります。 ③消化器系の病気  胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆石・胆嚢炎・膵炎・膵臓癌・大腸癌で食事に伴い腰が痛んだり、痛みが強くなったりします。吐き気や上腹部痛があります。 ④泌尿器の病気  尿路・尿管結石・腎結石・腎炎・腎盂腎炎・腎盤炎などで排尿時に腰痛が起こります。吐き気や血尿があり、下腹部や脇腹痛が出現します。 ⑤婦人科系の病気  子宮筋腫・卵巣嚢腫・卵巣癌・子宮癌・子宮内膜症などで、月経時に腰痛が起こったり、痛みが強まったりします。下腹部痛や便秘があります。 ⑥血管の病気  解離性大動脈瘤・閉塞性動脈硬化症などで、腰にいつもと異なる激しい痛みが出る(解離性大動脈瘤)。脚の痺れや間欠性跛行がある(閉塞性動脈硬化症)。

これらの病気は命に直接関わる病気もございますので、おかしいなぁと想ったら、躊躇なく119番に連絡し救急車で救急病院に搬送して戴いた方が賢明かと存じます。その為にも日頃からご自分の体と対峙し体の奥の叫びやサインを見逃さずに自問自答しちょっとでも変だなぁと想ったら医療機関を受診していただきたいと想います。

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今回発表されたガイドラインの中に多くの人が陥いりやすい、例えばぎっくり腰になると今までだと「まず安静」という考え方が主流だったのですが、今回からは「安静は必ずしも有効な治療法とはいえない」とし、急性腰痛でも、痛みに配慮しながら可能な範囲で動く方が、ベッド上で安静にしているよりも痛みを軽減し機能を回復させる効果が見込めると記しております。

急性時によく患者様から質問を受ける中の一つに「温めた方がいいのか?それとも冷やした方がよいのか?」と質問されますが、当院では急性のぎっくり腰等で患者様が来院された場合はほとんどの確率で患部を最初は氷嚢で冷やさせます。

先ずは急性症状である熱感と腫れと発赤を取り除き最低限の日常生活を可能にしなければなりません。冷やすことによって血管を収縮させ一時的に血流を阻害させその後の血管の拡張を促し患部の循環改善につなげ痛みを和らげるといった具合です。 以前なら自宅に帰られたら安静を指示しておりましたが、ガイドラインが発表されてからは痛みを伴わない範囲でしたらどんどん動いて下さいと指示しております。湿布も冷と温どちらでも気持ちのいい方でいいですよ!と指示しております。治療後もあまり痛みが軽減しないようであれば患部をコルセットの様な物で固定し、痛みが軽減したら極力外す様に指導しております。


多くの人が経験する非特異的腰痛を防ぐ予防法としたら、腰痛もある意味『生活習慣病』の一つと考え「よい姿勢」「適度な運動」「愉しい仕事」「バランスのとれた食事」を予防の基本4本柱として、姿勢は椅子に座る時はあごを引き、しゃがむ時は出っ尻で、立っている時はお臍をへこませ(ロングブレス、ドローイン)歩く時は大股で膝の裏をしっかり伸ばす。 運動はお勧め体幹トレーニングです。自分の体の中に自前のコルセットを造ってしまえばいいのです。 ハンドニー・サイドブリッジ・エルボートウです。この3種類の体幹トレーニングを行えば先ず介護保険に一生お世話にならずにすむと想います。詳細のやり方はインターネット等で検索してみて下さい。

仕事は心に不満を抱いて行っていると痛みが慢性化してしまうので忙しくとも、愉しいと想える工夫を是非してみて下さい。大人でも子供の頃にやったプラモデル造りやラジコン、アイドルの追っかけでもいいかなぁ・・・何か没頭できる趣味を見つけ、ペットとして犬を飼うのもいいそうですよ。 食事は花粉症の時にも書きましたがキーワードは『腸内環境』です。いかに腸内環境を整えるかが腰痛も含め健康との関連性が強いと感じております。その為には先ずはよく噛む事が一番大事です。発酵食品を摂ったり冷たい物を食べたり飲んだりしないという事は云うまでもありませんよね!

最後にまとめの意味も含めて、「痛み」のメカニズムを書きます。 神経の末端部分には「神経終末」と「侵害受容器」というものがついていて、ここに刺激が加わると、神経は脳に向けて痛みの情報を発信します。そして、この情報を脳が受け取ることで「痛い!」と感じます。簡単に言うと痛みは脳が感じて決して患部の腰椎が感じているのではないと云うことです。 痛みは「物理的な刺激」と「炎症による刺激」の2種類からなります。先ほど骨には神経が無いから痛みを感じないと云いましたが、実際は骨の周りにある骨膜という組織に大量の血管や神経が通っていて、この骨膜にある神経が刺激を受け痛みを感じております。腰椎の圧迫骨折では骨自体よりは周りの骨膜が損傷してその刺激が脳に行き痛みを感じているのでしょう。 見える腰痛(特異的腰痛)言い換えれば、画像で診断のつく腰痛の発信地は椎間板・椎間関節・仙腸関節(仙骨と腸骨を結ぶ関節)が殆どですし、見えない腰痛(非特異的腰痛)は画像診断では判断がつかない腰痛ですし、病院や接骨院を訪れる8割5分の患者様方はこのタイプであります。前述した重篤な病気が原因で起こる腰痛ではない限りは、見えない腰痛を見える様に治療し治していくことが、我々治療家の使命だと想っております。

見えない部分の痛みのコントロールは非常に難しいとは想いますが、もし患者様として痛みをコントロールするとしたら、先ほどの痛みのメカニズムで脳が痛みを感じていると云いました。その脳に自らトリックを掛け、どんなに痛みで辛くとも、どんなに痛みが酷くとも、どんなに仕事が忙しかったりしても、ストレスで心も身体も押しつぶれそうになっても・・・脳をいつも『快』の状態にしてあげる。それは頭の中で、楽しいこと、嬉しいこと、倖せなことを想像するだけでいいです。 決して現実に起こっていることではなく、フィックションの世界のことでいいですからとにかく脳を快の状態にするスイッチを自ら見つけ押して下さい。そうすることによって脳内モルヒネといわれる快楽物質が分泌され痛みが和らぐとされております。その快楽物質の名は皆様もご存じのセロトニンであったりドーパミンであったりエンドロフィンです。

脳のトリックをうまく使って、自動的に自律神経のバランスを整えさえすれば、私たちの身体はオートマッチックにどんどんいい方向に勝手に治っていくという力が備わっております。 是非とも、皆様自分の身体を信じて腰痛を自らの手で治して下さい。

かわい接骨院・じょんのび治療室 主宰 川合 晃生

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くるくる保健室No .24『アンガーマネジメントとマインドフルネス』2021年03月31日(旧サイトより再掲)

みなさん!ついカッとなってどなってしまったことはありませんか? 逆に気持ちを押しこらえて、「あのとき怒っておけばよかった」と後悔したことは、ありませんか? 時代はコロナ真っ只中、コロナ警察が目を光らせ我々の行動を常に監視したり、インターネットの普及に伴って、叩くネタはいつでも満載、毎日SNS上のどこかで炎上騒ぎが勃発しております。 今回のくるくる保健室は「怒り」を取り上げたいと思います。 1.怒り

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